クランクシャフト検査
GPZ900Rのクランクシャフトネタです。
オーバーホールで分解したGPZ900Rのエンジン。
パーツの状態を確認するために各部の測定をしてみましたら、一番大切なクランクシャフトに、一応規定値内ではありますけど、歪みが確認されまして、そのまま再使用するべきか、振れを取るために力ずくで押したり引いたり叩いたりするべきか、とても悩ましいところです。
もちろん振れだけではなく、ジャーナル、ピン径なども測定してみてメタルの組み合わせが打刻どうりで良いのかどうかも確認します。
しかし、新品のクランクを使えるならまだしも、振れが出ているものを使うのも、振れを無理に直したものを使うのも、長い今後の距離や時間を考えると恐いものですので、よっしーがたくさん用意してくれた別のクランクシャフトが使えるかどうかをこれまたいろんな部分の状態を測定してみます。
芯が出ているかどうか、ピン、ジャーナルの径や面の状態をみることはウッドストックでもできるのですけど、それだけではこれらのクランクのどこかに目視できないクラックが入っているかどうかの確認はできません。 知らずに組付けてしまって、走行しているうちにクラックは伸びてしまい、エンジントラブルの元凶になってしまったらと言う不安はつきまといますので、どうにかして調べておかないといけません。
そこで、エンジンチューナーのよっしーのエンジンチューナー仲間の方のところでこのような磁気探(漢字はこれで合っているのかな? 無知ですみません)という装置でクラックのチェックをしてもらいました。
これは鉄などの磁性材の表面の傷(クラックなど)の見つけるのに適している検査だそうでして、クランクシャフトに磁気を発生させると、S極、N極間で磁気を帯びます。 その中で傷がある部分に磁束が漏れてしまい、小さな別の磁極が発生します。
船舶の部品なども調べないといけないのでこのような大きな装置になるのでしょうね?
そこで、調べる個体に蛍光体(顔料)を付着させた磁粉を吹き付けると磁気の発生している小さな傷の磁極に磁粉が付着しますので、傷の何十倍もの幅で粉が付着しますので、傷を目で確認することができるようになるということです。
結果としてはクラックは検出できませんでしたので、これらを使用しても大丈夫という結果になりました。
このような測定や試験をしなくてもその部品の性能は変わるわけではありませんので、見方によっては大きなお世話ということになるのかもしれませんけど、それではオーバーホールという定義に値するのかどうかということにはいささか疑問が生じます。 私たちが身体の健診に行って診てもらう時に、「ここはたぶん大丈夫、きっと何ともない、普通は悪くなりにくいから診ない方が時間もかからず費用もかからない」 では健診や検診にはなりません。 オートバイもこれと同じです。 だから8耐などでも、とてもパワーが出ていてもの凄いタイムで走っているのに、ファクトリーチームはトラブルなく優勝してしまうのではないでしょうか。 本来ならトラブルが出ないようにするとパワーは控えて優しいエンジンにするしかないところですが、あの方々は、おそらく徹底的に各部の健診を怠らないからこその結果なのでしょうね? もちろん、少しサボっていてもトラブルが出る確率は少し減るだけで、その確率だとおそらく発生しないのでしょう。 しかし、トラブルが出る確率がゼロに近ければ近いほど、優勝する確立も近くなることは確かなことですので、同じOHという名目の作業(他の作業でも同様です)でもその内容は大きくレベルが異なるということで、いつもひと手間を惜しまず頑張っております。