ゼファー750エンジンオーバーホール

ゼファー750のエンジンオーバーホールです。

自分の能力がないからか、4-1の抜けの良い社外マフラーを装着して、FCRなどのレーシングキャブレターを使うと低中速の具合がノーマルよりも悪くなることが多々ありまして、そのような車種に関しましては、あまりレース用のキャブレターはお勧めしないようにしていました。 今回のゼファー750もそんな組み合わせでセットに悩み、ついでにシリンダヘッドを取り外さないと修正できない別の損傷がありましたので、腰上のオーバーホールとプラスして、FCRでも使えるように少しだけ仕様変更をしてみました。

低中速が出ない現象は、圧縮も同時に上がる社外ピストンでボアを上げると解消されるのですけど、それにはかなりのコストがかかりますので、今回はノーマルピストンのままシリンダヘッドの面研で圧縮を少し上げることで対応することになりました。

よく面研しているZのシリンダヘッドのようにミリ単位で削ることはできませんので(削る余裕があるだけで、Zでもミリ単位では削りませんけど)、削る数値とバルブシートの状況を確認しながら0.1mmずつ加工していきます。 なんとか狙った圧縮比にはなりましたので、あまりにも酷いマフラーでなければ、キャブレターは機能しそうです。

ピストン、燃焼室の圧縮が確保されても、バルブとバルブシート間が密着されてなければ、せっかくINバルブから吸入してきた混合気は圧縮されることなくバルブとシート間から抜けてしまいます。 このゼファーのバルブもバルブシートも走行距離以上にかなりヘタっておりましたので、バルブは新品に交換することになりました。

バルブシートはこのように黒い粉が出るくらいゴリゴリ削らないと綺麗な面になりません。 よく擦り合わせをたくさんすれば良いなどと、シートカットをしなかったり、適当なシートカットで済ませているお店もありますけど、それではちゃんと圧縮を確保することはできませんので、オーバーホールの意味合いも施工するショップや人で変わってきます。

シートの外径と幅も同時に確認しながら丁寧に、そして、あまり削りすぎるとバルブが沈んでしまい、これでも圧縮は低下しますので、綺麗になる最小限を狙って少しずつ加工していかなければいけません。

シートカットが終わると、密着具合を数字で確認しています。

これで求めた数値に達していないとすると、綺麗に見えてもバルブとシートの角度が微妙に合っていない、面が綺麗に加工されていないなどの原因が考えられますので、再度カットし直します。

目視では絶対に確認できませんし、このような大事なところを経験や勘で大丈夫というような、いい加減なことはできませんので、しっかりと数値で確認しないといけません。

暫定で再使用することとなったピストンはレッドチェックでクラックの有無を確認します。

4つのうちのひとつが…

どう見てもクラックが入っています。

レッドチェックしなかったら、適当な判断で組付けて走行していたところでした。 走行中ここから割れ始めたらエンジンが全損になる確率も少なくありませんので、「そこまでやらなくても…」 と言われることも多いのですけど、「やっぱり、やるに越したことはないでしょ?」 と言うことになるわけです。

さらにこのクラックの場所はこの画像のように小さな鏡で裏側を見ることをしないと発見が難しい部分でして、ずっと長年エンジンに接している “よっしー” じゃないと見つけることはなかなかに困難だったのではないでしょうか? 

シリンダスリーブはホーニングを施してクロスハッチを作り、こんな感じでピストンリングの合口の寸法を合わせています。

腰上のオーバーホールだけでもこのような作業、確認を経て組込まれていっておりますので、分解して洗浄して組むだけの、同じ名前の “オーバーホール” とは内容が全然異なるということが解っていただけるとありがたいです。

結果としては気になっていた低速のトルク不足も解消され、まるでボアアップしたかのような乗り味になりました。

先日のZRX1100の記事でも書きましたけど、トルクの谷の解消はまずはちゃんとしたエンジンの能力が必要になりますが、最終的にはキャブレターのセッティング次第で最悪な乗り味にも、最高な乗り味にも変わるものですので、最後までしっかりと調整しないともったいないことになります。 

だけど…

このゼファー…

きちんとしたつもりだったのに… (つもりだけでは意味ないんだよ~)

「ちょっとエンジンの回転の落ちが気になるんだけど…」 という質問があり…

測定やら確認やら偉そうに言っているくせに、「ごめんなさい、やり直します」 という事態に…

自分の確認不足です。

以後気をつけます(泣)…



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