GPZ900Rフレーム加工
前回の怪しげなフレーム加工の続き。
見栄えのためだけに 「リアの車高を上げたくて仕方がない症候群」 の病におかされたGPZ900R。
車両によってはスイングアームが垂れ過ぎてドライブチェーンがだらだらで、「だらだら対策ローラー」 を装着する始末…
こうなってくると、元々のカワサキの設計からは大きく異なった動きになってしまい、せっかく大金をかけたのにどんどん乗りにくくなってくるという、変なバランスのオートバイになっているニンジャが山ほどいらっしゃいます。
この車種にありがちな、かなり誤ったカスタム例だけど、乗りにくくなってもお尻がプリンと上がってほしいという要求は変わらないようでして、あまりやりたくはないけど、今回だけよ、ということで、なんともめんどくさい加工をしてしまったわけです。
これを見てそんなことせずにシートレールだけを上げればいいじゃないか? とつっこまないでくださいね。
ということで、スイングアームのピボットの位置を下げてアンチスクワットを減少させる加工です。
簡単そうに書いていますけど、大変な作業。
フレームの元の部分を削り取って、下方向に削るのですけど、これをかなり精度よく加工しないとフレームが曲ってしまいますので、マシニングの上で芯を出して真面目に加工します。
サイドのプレートは下方向に位置変更の目安になるように製作したものでして、実際にはいろんな方法で水平、垂直を出しますので、この目安の役割を終えると廃棄されてしまう可哀そうなパーツです。
プレートのポケット加工されている大きな丸に合わせて加工していきます。
しつこいですが、いろんな方法で芯だししていきます。
左右の加工を終えて実際に溶接する部材を貫通させた状態です。
ばっちり精度良く加工ができましたね。
しかもオーナー様の要望でノーマルのピボットシャフト径、16mm??だったっけ?17mmだったっけ? まあどちでもいいや、 それを20mmに拡大したいということで、肉厚を考慮するとかなり大きな穴を開けないといけませんでした。
カスタムショップやユーザーは「強化なんちゃら」とか、「軽量なんちゃら」とか、好きよね~
やっておいて言うのもなんですけど、あまりにも元の設計からガチガチにしすぎると、挙動がライダーに伝わりにくくなり、それを安定していると勘違いしてしまい、逆に危ないマシンになることがあります。
旧車はある程度、タイヤ、ホイール、フレーム(今回のシャフトも含まれます)、サスペンション(ステム、スイングアームも含まれます)が潰れる、よじれることで、ライダーに信号を与えてくれるようにしておかないとタイヤの表面だけに頼って走ってしまうような危険なことになります。
最近、今時のオートバイでなんで転んだか解らないまま転倒するライダーが多いような気がします。 今のマシンは剛性の高いラジアルタイヤで、受け止めるサス、フレームも昔に比べると太くて、硬くて(いやらしくてごめんなさいね)、結構な高次元のライディングをしてないと各パーツの動きを把握しにくくなっており、しつこいですけど、タイヤの表面グリップだけで走ってしまうと(表面グリップって言ってもきちんと押しつけていないと接地面はすくないし、面圧もかからないので、極めて薄いグリップになっています)滑る瞬間までライダーに信号が伝わってこなくて、なんで転倒したのか解らないまま転んでしまった、というこになるのです。
古いオートバイはその半面、よれよれで、挙動が解りやすく、低次元でなんか恐いかも?
という良い信号を出してくれます。
あまりにも低次元すぎると面白くない、満足しないユーザーさんは中次元(なんじゃそれ?)狙いくらいのカスタムをすれば心地よく乗ってもらえるのではと思いますけどね。
実際この状況はレベルの高いレースの現場でも感じており、あまりにもタイヤが良くなり、勢いにまかせてタイヤのグリップ力に頼って走っているだけで、ライダーが敏感にサスやタイヤの潰れ方を感じながら丁寧に速く走れる若いライダーはなかなかいないように感じます。
タイヤがいいから一発のタイムは出るのかもしれませんけど、レース終盤や、シリーズランキングを見ると、熟練のスキルを持っているライダーが速いという表現よりは強いという表現がふさわしい結果を出していることから見ても、感じ取ることの重要性は必要であることがわかりますね。
ストリートの場合はこのようなスキルを身につけることは難しいのかもしれませんけど、せめてオートバイの特性を見極めて走行したり、カスタムしないと、それに見合ってない危険な走りになったり、車種に見合ってないカスタムになってしまいますので、走り方を教えてくれるショップや、きちんとしたオートバイを提供してくれるようなショップさんに相談するのが良いと思います。
このGPZも良くなかった欠点を見直す作業がたくさん残っており、夏のロングツーリングに向けて急ピッチで作業しないといけません。
このフレームもこの後溶接して、ペイントがあったりとまだまだやること山積みです。