GPZ1100Fシリンダヘッド修正
オーバーホール中のGPZ1100Fです。
20万キロ以上走っており、しかもそれなりに酷使されているエンジンです。 そのエンジンも3回目のOHでして、各パーツはかなり疲労がたまっており、前回のOHではクランクシャフトを交換したり、シリンダスリーブを入れ替えたり、そのほかは各部修正しながら使ってきました。
前回、前々回のOHでリンダヘッドのカムホルダー取付け部分のM6のネジ山を全部ヘリサート処理をしたのですけど、今回はそのネジ山の2か所がヘリサートがメスネジごと抜け出てしまい、そのままでは修正が不能になるという事態が発生しました。
もう8mm以上の穴になってしまいましたので、M8のタップを切ることもできず、他に考えれることといえば、シリンダヘッド本体側にM10、カムホルダー側にはM6になるような特殊なスタッドボルトを作って挿入するか、 しかし、この部分は2か所共ノックピンが入るところですので却下となり、他には修正部分を外側から削り落としてからアルゴン溶接で肉盛りし、そしてM6のタップを切って、ノックピンの加工をして、外側を整形するというもの。 しかし、この方法も熱が入るというリスクや、実際に上手に溶接ができて綺麗に仕上げることができるのかというリスクがあり結局は却下となりました。
できるだけシリンダヘッドに対する負担を減らして、しかも成功率が高い方法。 なるべく元の状態に近い状態にする方法を考えまして、無くなった元のヘッドのアルミを入れ込むやり方として、ヘッドにネジを切って、そこに製作したボルト状のボスを入れ込み、その後にマシニングを使って精度良く追加工するというもの。
この方法でやっておられる内燃機業者様もいらっしゃいますので、全然オリジナリティーはないのですけど、この状況には一番スマートなやり方だと思い頑張ってみました。
加工の前には細かく位置決めをするためにカムスプロケットの穴のピッチや円のセンターをしっかりと測定してから加工を始めます。 この測定作業が一番シビアで時間もかかります。
位置決めが完了したら機械にしっかりと固定して芯がずれないようにします。
綺麗にネジを切って、製作した部品をインストールします。
挿入が完了しましたらヘッドの面まで削り落として、M6のタップを切って、ノックピンの加工をします。
じゃーん、これで完成! 手間はかかりましたけど、なんとか修正できました。
精度良く加工しましたので、ノーマルの時はノックピンがスコスコで少しガタがあったのが、加工後はキューッとしっかりと入るようになりました。
よかったよかった。
古くて、もう売っていない部品の加工はとても神経をすり減らす作業であり、やらずに済むものならやりたくない作業です。 しかし、長年に渡りウッドストックを信用してくださり、大事なオートバイを託していただいておりますので、今自分たちのレベルで可能な最善のサービスは出し惜しみせずに提供したいと思っております。
それにしても12月は早いですね~ 焦るゎ~