シリンダヘッドポート加工
シリンダヘッドのポートの加工です。
エンジンのオーバーホールで現在お預かりしている車両でポート加工作業がメニューにありましたゼファー1100とCB1300SFの2台を一気にやるぞと頑張りました。
まずは2バルブのゼファー1100から。
お客様からはさらっとお願いというオーダーでしたが、さらっとがなかなか難しい感じでして、やり始めたらやはりいつもの調子でしっかりとやらないと気が済まない症候群ですので、ご覧の感じまでには仕上げてみました。
敢えて光を当ててみるときちんと段差や歪みがなく削られているのが分かると思います。
20数年前に教えてもらった、自分が空気になってみて、どこが邪魔かなー、ここもう少し空間があったら通りやすいのになーなんていうことを想像しながら形を整えています。
バルブガイドが曲者でして、これを残すのかどうかで随分と大変さが変わってきますし、未熟なころは(すみません、いまも十分未熟でございました)ガイドの横が歪な形になってしまい先輩方に怒られていましたね。
ピカピカにまで磨いても効果はなく、むしろ流れの妨げになると考えられますので、そんなに細かいペーパーは使っていません。 これはレーサーでも同じようにしています。 よく雑誌やインターネットなどで鏡のようなポートを見ることがありますけど、工芸品??? なのかしらと思うポートもよく見る光景ですね。 そんなことに時間をかけるよりは形状と4気筒同じようにそろえる方が大切と考えます。
続いてはCB1300SFです。
4バルブ4気筒の加工量はさらになかななのボリュームです。
同じくバルブガイドを残すと本当に加工が大変になります。 しかも4バルブだとガイドの真横はさらに狭くなり小さなリューターで少しずつ削らないと綺麗になりません。
それだったらガイドを削り取ってしまえばいいじゃんか? と言われそうだけど、この数ミリを削って短くすることで、バルブガイドやバルブの寿命がかなり短くなりますので、よっぽどのオーダーでない限りはガイドは残しています。
これがなくなると本当に楽ちんなのですけどねー。
ドラッグレースのように短期決戦だったら削り取っちゃうかもしれないですね。
尚、このポートにはノーマルの鋳肌が残っている部分があります。 ノーマル時から断面形状的に凹んでおり、そこを綺麗にならそうと加工してしまうとその周りまで凹んでしまい大きく流れを悪くすることになりますので、見た目はよろしくはないですけど、勇気を持ってそのままにしています。
インジェクションやキャブレター⇒インシュレータ⇒そしてインテークポート⇒ポート+INバルブ間⇒燃焼室⇒EXバルブ+ポート間⇒エキゾーストポート⇒EXガスケット⇒エキゾーストパイプまでの流れが大事で、決してポート単体で考えてはいけません。
そう考えるとキャブレター、インジェクションボディーはこれでいいのか? スピゴットの内径はどうなんだ? インマニの内径は? EXガスケットでの段差がいけてないのでは? エキパイとの継ぎ目もきちんと段差をなくすように加工しなきゃ駄目なのでは? といろんな部分に着目しておかないと本当に良いエンジンはできないと思います。 オートバイはアクセルを回したらどういう順序でリアタイヤが回るのかを想像しながらオートバイを作るように心がけていないとトータルでバランスの良いマシンはできません。 そう考えると様々な要素が備わっているメカニックじゃないと本当に良いバランスを持ったエンジンや車体は作れないのでは、と日々いろんな妄想をしながら仕事をしております。 ウッドストックはエンジン専門店ではありませんし、足回り専門店ではありませんし、機械加工の専門店ではありませんし、レース専門でもありませんし、旧車専門でもありません。 どの分野も専門職の方よりは劣っているのかもしれませんけど、高次元(あくまでも目標です)ですべての分野をバランスよく兼ね備えていないとお客様の言わんとしていることを理解して、実現化できないと思いますので、それこそがウッドストックの強みなのかなと思っています。
このCB1300はこれからシリンダヘッドとシリンダの面研してかなーり圧縮を上げる作業をします。
このところウッドストック工場の機械がなかなか空かなくて、このような一品物の加工に時間がかかっておりお客様には大変お待たせしており申し訳ありません。
おざおざ共々深夜まで頑張っていますのでもう少々お待ちくださいませ。