憧れのZとのご対面
どういう因果か約30年近く前、まだ学生でオートバイばかり乗っていた時代に雑誌でこのZを見て、甚く感動して、自分もオートバイの、しかもカスタム業界に入って、こんなカッコいいマシンを作ってみたいと老舗のワークスに入社を希望するきっかけになった、ワークスが製作した車両がなぜかなぜかウッドストックに入庫して整備することになりました。
その時代に自分が触ったことはなく、先輩方の渾身の作品で、当時はいろんな雑誌に掲載されて超有名なZでしたので、いつまでも憧れのまま時は流れていたのですが、この度、ウッドストックの常連のお客様がこの車両を譲り受けることとなり、ご対面することになりました。 当時はボルトオンパーツというものがほとんど存在せず、レース用のパーツを上手に加工して装着することのできる技術のあるショップしかこのようなカスタムを手掛けることができませんでしたので、レース活動も長年している老舗的な一部のショップ、メーカーだけの特別な仕事であったように思います。
今ではボルトオンパーツが豊富にあり、着せ替え人形のようにネジを左と右に回すことが出来さえすれば、見た目だけは派手でカスタムなバイクが出来たりしますので、この時代のカスタムマシンの方が各部に苦心の形跡があり、機械加工の中に手仕上げの部分も残り、カッコいいマシンのような気がしますね。
その当時の私もせっせと加工していたバックステップなどなど。
明らかに現代の加工の方がスタイリッシュで綺麗なのかもしれませんけど、人間で考えると老人が若い人が着るような派手な洋服を着ると絶対におかしいのと同じで古いマシンにはそういう雰囲気を持ったパーツの方がカッコいいはずだと思います。
こちらのマフラーステーも手作業で外周を切って、ドリルで穴開けしただけのものだけど、このマシンには似合っていますよね。
だけど、だけど、キャブレターのような機能部品は新しいのにこしたことはないですね。 長年放置していたキャブレターは分解してみると中身は大変なことになっており、再生するのに一苦労。
しかもこれまた懐かしのミクニのTMキャブレターですので、しばらくぶりのご対面でした。
それでも頑張ってオーバーホールすればそれなりには蘇るわけですが、インジェクションまでとは言いませんけど、せめてFCRくらいがやっぱりありがたいですね。
自社で製作したパーツを駆使してカスタマイズしているこのマシン見て触って思うことは、約30年前に刺激を受けて工具を持ち始めて、気が付けば同じような機械を設備して同じようにオートバイと向き合っているということ。 ずっと変わらず大事にしてきたことはその時に様々なことを教えてくれた先輩方に恥をかかさないように良い仕事をすることでした。 年齢を重ねてちょっと生意気になってきたところで、このオートバイにご対面して、初心に帰るきっかけを作っていただいたことに感謝する出来事でした。 初心に戻って基本をしっかりと頑張りましょうね。