測定いろいろ
ウッドストックには様々な症状でお悩みの不調のオートバイの相談がやってきます。
エンジンからの異音の原因がどこなのか聞いてほしい。 ギクシャクするのを治してほしい。 ハンドリングがおかしいような気がする、などなど。
ここのこの部品を交換してほしいだとか、これが折れているから溶接してほしいなどのように目的が特定できていることは本当に簡単でして、それに引き換え、症状が曖昧でそれの原因を探ることはそう簡単なことではありません。
最終的には部品を分解してみて、各部の目視、触診、そして測定してみないと原因の解明にまでは至らないことも少なくないですね。
こちらは排気が白煙で、マフラーの内部にもオイルが付着しているという症状がありましたので、エンジンをシリンダまで分解して各部の測定をしているところです。 ピストン、ピストンリング、シリンダスリーブ、バルブ、バルブガイド、ステムシールなど、その症状に該当しそうな箇所は細かく確認作業をして原因を探らないといけません。
ピストンの外径はもちろん、シリンダとの接触の具合、傷の入り方、ピストンリング溝など不具合を見逃さないようにしながらの作業となります。
シリンダの内径は何ヶ所も測定して摩耗、変形具合を確認しています。
こちらは先日の当ブログでご紹介したZ1のクランクシャフト。
シャフトの振れ、コンロッドスモールエンドの内径など、OH済みのものでも念のために測定は必要だと思います。
こちらはよっしーが自作しました、とある部分を測定する特殊工具。 これまで自分の測った数値に少し自信がありませんでしたけど、これはしっかりと測定することができる優れものです。
こちらはバルブのシートカット後に圧縮漏れがなくしっかりとバルブとバルブシートが密着しているかを数値で確認するための測定機です。 このようにやった作業を数字で確認することによって、治ったと思う、であったり、大丈夫のはず、ではなくこの数値で組んでいますと、断定することは大事なことであり、このようにしないといつも同じエンジンが組めないはずですので、クオリティーを維持するためには手間はかかりますけど、必要不可欠なチェックではないかと思っています。
こちらもいつものバルブタイミングの測定風景。 シリンダやシリンダヘッドの面研やカムチェーンの張り方などでもタイミングは変化します。 特にハイカムを組む場合には性能を出すことと同時にトラブルが出ないようにするためにもきちんと測定、調整しないといけません。 この調整後にはピストンとバルブのクリアランスも測定しておかないと安心してエンジンに火を入れることはできませんので、トラブルが出ないようにするためにも、そのクリアランスは最低限以上は確保できるようなタイミングにする必要があります。 画像はありませんけど、ピストンとバルブのクリアランスを測る工具も自作をしていろんなエンジンごとに用意しています。
いつも言っていますが、作業の名前、項目は一緒でも、その内容はショップ、メカニックの違いで千差万別、今回お見せした測定機器をまったく使わないところもあるでしょう。 なくても組めますので。 ですが私たちは自分の感覚だけに頼っていたら、自分の調子が悪い時には調子が悪いようにしかできず、それにより不具合があっても気付くことができないことで起こるトラブルが出るのが恐いので、感覚だけには頼らず、いつも数字で安心できるようにしているのです。
経験豊富な感覚という武器が必要な時もたくさんありますので、そこは誤解なくお願いします。 あくまでも安心するための確認のためです。
画像がありませんでしたので、今回は載せていませんけど、まだまだ測定するための工具はたくさんあります。 時にはウッドストック工場のマシニングに固定して、もっと精密な測定をすることも少なくありません。
これだけ真面目にやってもトラブルがまったく発生しないわけではないので、どれだけ手をかけてもやりすぎということにはなりません。 たくさんの部品の集合体のエンジン、特に新品の部品がそろわない旧車のエンジンは本当にやっかいですね。