ZX-10R(2016-)エンジンオーバーホール

レースで使用するZX-10Rのエンジンのオーバーホールです。

レースで使うからといって、何か特別なことをするわけではなく、ストリートで使う皆様と同じ作業を淡々とこなすだけです。


作業的には同じですが、違うところがあるとすると、各パーツを完全に走行距離で管理して、見た目に使えそうであったとしても距離を走っていれば新品に交換するということでしょうか。 16バルブですのでパーツ代も相当な金額になりますけど、レースの目的は予選落ちをせず決勝で完走しないことには、速い遅いは別にして結果というものが残りませんので、せめて最終ラップを走り切るまでは壊れないようにするために最善の整備をする必要があります。 ですが、その内容はそのライダーのレベルや資金力によって様々に変わりますので、これという決まったものはない感じです。 

上の画像はバルブシートカットを完了された状態。 当然、バルブ周りは全て新品に交換します。


きちんとバルブシートカットが施されているかどうかは職人の感に頼らず、テスターにより数値で確認します。 …の方が何かトラブルがあった場合にも 「もしかして、あの時、自分はちゃんとシートカット出来ていたのかな?」 などと、後で確認のしようがなくなることを防いだり、組む度に仕上がりが違うというようなことがあっては、次の段階でどんな仕様にするのか、などの指標になりませんので、毎回、同じ動きをするというのは大事なことだと思っています。


ピストン、ピストンリング、ピストンピン、コンロッドは全て重量を測定して、各気筒がバラつきの無いように組み合わせます。


シリンダの内壁も綺麗にホーニングを施します。


大事なクランクシャフトは絶対にトラブルが出てはいけませんので、入念にオイルラインの中を洗浄しなければいけません。

洗浄台で適当に外側だけを綺麗にしてもオイルラインにスラッジが残っていると、メタルなどを傷付ける原因になりかねませんので、面倒でもしつこくしつこく洗浄しています。 ラッピングをして摺動面を綺麗にするようなカッコいいチューニングよりもこちらのお掃除の方が重要だと思います。


だって、真っ白だったウエスがこんなに真っ黒になるくらいライン内から汚れが出てきました。 これらを見逃していると、この黒い汚れでせっかくの新品パーツを始動と同時にキズものにすることになりますので、入念にするに越したことはありませんね。


メタルの厚みは勘合表に頼らず、クランクシャフトのピン、ジャーナルを測定して…


コンロッド、クランクケースの内径も測定して…


その測定どおりにクリアランスの値が合っているかどうか、更にプラスチゲージで測定して、2重に保険をかけて確認します。

あまり大事ではないところは思いっきり手を抜いて、大事なところは保険に保険をかけて念入りにチェックしています。


こちらも大事な作業のコンロッドボルト、ナットの締め付けはボルトの伸びで管理しています。 それでもボルトが不良ということも考えられますので、こちらも念のために締付けトルクも確認して8個のトルクにバラつきがないかどうかの測定をしています。


今回のエンジンは村リンのだから、バルブタイミングはマニュアル通りではなく、遊んじゃおうかなーと、バルブとピストンのクリアランスも測定しつつ、あれこれ考えながら決定しました。 これも前回、前々回と同じ流れで組んで、バルタイはあの数値の場合にはこうなったとか、きちんとデータがありますので、当てずっぽではなく、きちんとしたストーリーがあってこその遊び方ができるという流れでやっています。


早く仕上げないと走行時間がなくなるからと、思いっきり手抜き工事をしてやろうと思っていたのに、分解されたエンジンパーツを目の前にすると、やっぱり真面目にしてしまう性で、上記のようにわりときちんと確認作業を疎かにせずに作業しました。

これでエンジンのことは気にせずに、練習に集中できればいいのですけどね…


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